部品の圧入では、 品質管理上「抜け」「トルク不足」「かじり」などが問題となります。とくに、「抜け」対策は困難を極めます。しかも、圧入した部品すべてに抜去力の試験を行うことは不可能です。しかし、 抜去力と相関関係がある場合圧入力(※)の良否判定を作業と同時に行うことで、抜去力検査を代替し、これにより全数検査が可能となります。この手法はISO、QSに対応する上で、重要なポイントとなります。
上述の内容に基づき、圧入力の良品範囲の上限値、下限値を決定する方法について具体的にご説明いたします。なお、以下に述べるテストは弊社荷重管理装置チェックマンを使用し、お客様のご協力により実際のワークにて行ったものです。
※圧入力…「圧入時のピーク荷重値」または「圧入終了直前の荷重値」のこと。以下、それぞれ「ピーク値」「エンド値」と称します。

1.データ作成

圧入製品は多種多様です。荷重管理導入前にデータを取ることは不可欠といえます。

  1. 試験用の部品(圧入前のもの)を用意します。まず、それぞれの組に番号をつけておきます。
    ここでは№1~№25とします。
  2. それぞれの組を順々に圧入し、チェックマンによりその時の圧入値(ピーク値)を測定し、
    あらかじめ用意した表に記入します。(下記参照)
  3. 次に、圧入した部品を実際に抜いて抜去力を測定します。この値も表に記入します。
No.圧入値( ピーク値)抜去力(ピーク値)
11 . 3 91 . 9 4
21 . 2 52 . 1 0
31 . 2 42 . 0 6
41 . 0 41 . 6 0
51 . 3 02 . 2 0
60 . 8 91 . 3 2
70 . 6 80 . 8 2
81 . 1 01 . 6 8
91 . 5 72 . 2 4
101 . 4 52 . 0 4
110 . 7 61 . 2 5
121 . 0 31 . 5 4
130 . 6 50 . 9 8
141 . 1 21 . 8 9
150 . 7 51 . 1 0
161 . 2 11 . 7 6
171 . 1 91 . 6 6
180 . 9 51 . 4 1
191 . 2 82 . 0 9
200 . 8 71 . 2 5
210 . 9 51 . 4 5
221 . 0 11 . 3 2
231 . 0 81 . 7 4
240 . 8 71 . 1 5
251 . 1 81 . 4 6
単位:kN

2.グラフ作成

  1. X軸を圧入ピーク値、Y軸を抜去力としたグラフに、前項1で作成した表のそれぞれの計測値を記入します。例えば、No.1のサンプルならX軸の1.39kNとY軸の1.94kNの交わる点をグラフに記入します。この要領で25個のサンプルの値を書き込みます。
  2. こうしてできたのが右記のグラフです。
  3. 右のグラフから抜去力と圧入ピーク値が相関関係にあることがおわかりいただけるでしょう。
  4. 仮に、この製品で保証しなければいけない抜去力の範囲が1.0~2.0kNとすると、このグラフから対応する圧入値はおおよそ0.6~1.2kNとわかります。
    この値を荷重管理装置の上限値・下限値に設定します。

3.回帰分析

次のように回帰分析を行うことにより、「圧入値-抜去力」の正比例直線を求め、前項2の内容よりも正確な上限値と下限値を得ることが可能です。

※パソコンの表計算ソフト(Excelなど)を利用すると簡単に計算できます。

No, 圧入抜去回帰式値
11.391.942.0952
21.252.101.8778
31.242.061.8622
41.041.601.5517
51.302.201.9554
60.891.321.3188
70.680.820.9927
81.101.681.6449
91.572.242.3746
101.452.042.1883
110.761.251.1170
121.031.541.5362
130.650.980.9462
141.121.891.6759
150.751.101.1014
161.211.761.8157
171.191.661.7846
180.951.411.4120
191.282.091.9244
200.871.251.2877
210.951.451.4120
221.011.321.5051
231.081.741.6138
240.871.151.2877
251.181.461.7691
単位:kN

左の表を基に作成したのが
上のグラフです。
このグラフから、前述の設定値の正確な値は、抜去力の下限値1.0kNと上限値の2.0kNをそれぞれなぞり、圧入値の下限値が0.7kN、上限値が1.3kNと割り出せます

 

回帰統計
重相関R0.9294
重決定R20.86378
補正R20.85786
標準誤差0.15098
観測数25
切片-0.063139037
X 値1.552721967